【震災関連】 各地の工務店の声
東日本大震災、余震続くなか工務店も懸命に活動
「命を掛けた仕事」
㈱明城(愛知・安城市)の榊原勝己社長は、大工をはじめとする被災した職人のことを思い、同じ大工として心を痛めている。「しばらく彼らの仕事はないだろう。その間は給料の保証もないし、今後はどうなるのか」。こうした思いは、全国の地場工務店共通の思いだろう。
一方で、東日本の工務店・設計事務所の多くが、余震が続く中、被災建築物の応急危険度判定や、補修工事に取り組んでいる。
茨城県土浦市の「自然素材・木の家」の平戸治夫社長は市からの要請を受け、土浦駅周辺の住宅の応急危険度判定を行っている。ブロック塀の倒壊から浴室タイルの欠損など、まったく無傷の住宅はない状態。平戸社長はこれまで同様、地震に強い「総2階切妻の木の家」をつくり続ける決意を新たにしている。
栃木県日光市の設計事務所「建築工房蓮家〜RENGE〜」の工藤健志氏も16日、宇都宮市内で応急危険度判定に出かけた。3年ほど前に登録。当時は資格の一つとして「何かの役に立てば」といった軽い気持ちだった。「こんな状況で役に立つとは思ってもみなかった」という。
茨城県古河市の㈲田口材木店(リファイン古河、田口孝治社長)では瓦の補修が急増。だが、屋根に関する被害が各地で発生していることもあり、瓦自体の入荷が滞っている。ブルーシートを張って対処しているが、瓦が入らないことには、補修のしようもない。
屋根工事などを手掛ける㈱オオギヤ(埼玉県久喜市)でも、屋根の補修工事の注文がこの1週間で250件に上った。しかし補修に必要な南蛮漆喰が品薄状態。余震が断続的に続く現在、屋根は不安定な状態で、太陽光発電機器などの落下や雨漏りなども含め、「これから予想できないような被害が出てくる可能性もあります」。
余震が続く中の工事は、人命も危険にさらす。瓦の応急処置中に、屋根から落下して死亡する事故も発生している。㈲ヨシダクラフト(栃木県宇都宮市)の吉田武志社長も、緊急事態のため、はしごで屋根に上り応急処置を施している。命綱がとれればまだ良い方だ。「命を掛けてやる仕事。相通じるお客様の家でなければ、やれない仕事だ」と実感している。
抜本的変化の可能性
「例えば、阪神・淡路大震災の時は『耐震性』という改善点が見いだせた」と建築工房蓮家の工藤氏。だが、今回は「津波による被害を目にして、どうすればいいのだろう」という思いだ。
㈲ベスト・プランニング(神奈川県海老名市)の高橋幹雄社長も「住宅を浮かせた状態で保持し、流されないようにすれば多くの命を救うことができるかもしれない」など、津波対策を思案している。
埼玉県北本市の㈱蓮見工務店(蓮見建築設計事務所)の蓮見幸男社長は、都市計画業務の経験を持つ。今回の震災について「耐震構造は現行の基準で機能していると感じている。しかし津波対策は都市計画の中で議論する必要があるだろう」と述べる。
ただし、今回実施された計画停電に伴う混乱から、住宅の省エネ対策や自然エネルギーの活用の重要性を再認識した関係者は少なくない。スーパーなどでも節電で店内を暗くしているが「このぐらいの明るさでも十分では」と建築工房蓮家の工藤氏は感じている。今後、エネルギーの在り方も見直しが迫られるだろう。これまでも取り組んできた、住まいの省エネルギーや自然エネルギーの活用に、積極的に取り組もうという気持ちをさらに強くしている。
今回の被災状況から、持家はリスクが高いと考える人が増えるのではといった意見もある。日本の住宅の在り方も、抜本的に変わってくるのかもしれない。
「今回の震災を通して、改めて家族愛、近隣愛の大切さを感じた」と語るのは善光建設㈱(東京・目黒)の熊田敏夫社長。未だ被害の全貌がどれほどのものか分からない現状だが、復興に向けた動きも見え始めている。人々の住まいを支える地域工務店に期待される役割はとてつもなく大きい。
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