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WEB連載「工務店が知っておくべき法律知識」

 

川目武彦(かわめ たけひこ) プロフィール

平成14年、司法試験合格。平成16年、埼玉県弁護会に弁護士登録。

現在、弁護士法人川目法律事務所代表。

 
第1回 緊急危機管理〜既請負契約のトラブルに備えよう

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって多くの犠牲者が発生、膨大な建物が地震や津波で倒壊,焼損する結果となりました。建物のなかには建築途中のものもあり、これから工務店と施主との間で様々な法律問題が発生することが予想されます。
そこで、今回の災害の影響により施主と顧客との間で問題になりそうな事項について取り上げました。

 

Q 契約は済ませたものの、未着工の工事について施主が工事契約のキャンセルを申し出てきました。施主からのキャンセルに応じなければならないのでしょうか。

 

A 大震災の発生により、将来の生活に不安を抱いた施主がこのような申し入れをしてくることは大いに予想されるところです。
原則として一度契約を締結した以上、契約を一方的に解除することはできません。
ただし、今回のような大震災が発生した場合には、具体的な事情によっては「事情変更の原則」という特別な法理の適用により施主からの解除が認められる可能性があるので、キャンセルが無効であるとは一概に言えません。
施主が工事契約のキャンセルを求める理由にもよりますが、政府や金融機関の対応によっては施主の懸念が払しょくされることも考えられます。「今度の政府や金融機関の対応を見定めてから、契約の解除について話し合いたい」というように説得をしてみるのはいかがでしょうか。

 

Q 今回の災害のために建築資材が現場に届かず、工事の完了が大幅に遅れそうです。顧客は工事の遅れを理由に損害賠償を求めていますが、賠償に応じなければならないのでしょうか。

 

A 施主の請求は債務不履行(工事契約の遅滞)を理由とする損害賠償請求に該当しますが、債務不履行責任が発生するためには、債務者である工務店の側に帰責事由がなければなりません。分かりやすく言えば、そのような事態に陥ったことについて工務店の側に「落ち度」が必要だということです。
今回のような大震災を予想するのは不可能であり、物流の停滞による工事の遅延は避けることは不可能でしょう。よって、工務店に帰責事由はありませんので、工期が遅延したとしても、工務店がこれに伴う損害賠償を支払う必要はありません。
ただし、工事の予定に関しては、早めに施主に伝えて了解を得ておく必要があります。

Q 既に着工・建築中の建物が地震、津波で倒壊又は焼失してしまいました。施主は建築工事の続行を希望していますが、相当程度工事が進んでいたために、工事代金の大幅な増額が避けられません。増額分について施主に負担を求めることができますか。

 

A 請負契約では、当初契約の請負代金で仕事を完成して引き渡すのが請負人(工務店)の義務ですので、建築中の建物が損壊,焼失した場合であっても代金の増額を請求することができないのが民法上の原則です。
しかし、通常の請負契約では、契約書の中で、この点について特約を置き、請負人の負担の範囲を修正しています。
例えば、四会連合協定の工事請負約款では当事者が協議して損害が重大なものであることが認められ、請負人が善良な管理者としての注意を果たしたと認められる場合には注文者の負担とする旨を定めています。今回の災害は予見が困難ですので、十分な配慮をしていたのであれば施主に対して工事代金を増額してくれるように求めることができるでしょう。
なお、四会連合協定の工事請負約款以外の約款を利用した場合であっても、不可抗力で発生した損害については何らかの特約が契約で定められていると思われますので、該当すると思われる条項に従った処理がなされることになります。
このような特約がない場合であっても、今回の災害のような特段の事情がある場合には「事情変更の法理」により報酬の増額が認められる可能性があります。
契約代金の増額を承諾してもらって工事を再開する場合であっても、後々のトラブルを防止するために合意内容を書面にしておいてください。

 

まとめ


阪神・淡路大震災の際には、緊急措置として様々な特別立法がなされており、今回の災害に対しても復興支援措置が講ぜられることが予想されます。これらを活用するためにも拙速な契約関係の処理は避けるべきです。


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