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森林の洪水緩和機能 増強できる可能性を示す

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 森林に降った雨水の10~30%は森林内の地面に到達することなく蒸発し、大気に戻る。この現象を「遮断蒸発」と呼ぶ。一方、森林内の地面に到達した雨水は土に染み込んだ後、植物の根から吸収されて葉から蒸発(蒸散)するか、河川水や地下水となる。大雨で河川の水量が増えて洪水になるとき、その河川の流域が森林で覆われていると、森林で覆われていない場合よりも河川の水量が減って洪水時の流量のピークも低く抑えられることが分かっている。森林内の地面に到達する雨水の割合を減らす「遮断蒸発」もその要因の一つと考えられている。
 こうした中、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の村上茂樹研究専門員は、「遮断蒸発」と呼ばれる現象が激しい雨のときにより盛んになり、蒸発する雨水の割合がより大きくなることを明らかにした。
 これまでの研究で、「遮断蒸発」は雨の強さに比例して多くなることが知られていた。同研究では通常のスギ林よりも3~4倍密に植栽されたスギ林で「遮断蒸発」を測定。そして、1時間当たり20㎜以上の激しい雨のときにはその比例の度合いが大きくなることを新たに発見した。これは激しい雨のときに雨滴が枝や葉に衝突してできる飛沫が特に多くなり、飛沫の蒸発が増えるためと考えられている。
 同研究によって、激しい雨のときほど「遮断蒸発」がより多くなり、森林内の地面に達する雨の割合が減ることがわかった。このことは、今後研究が進展して植栽する樹種の選択や森林の管理によって「遮断蒸発」を増やせることが明らかになった場合、その知見を活用して森林の洪水緩和機能を増強できる可能性を示している。

【日本住宅新聞12月15・25日合併号より一部抜粋】

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