佐倉工場生産のパーティクルボード 木質ボード初のSuMPO EPD取得 東京ボード工業㈱
東京ボード工業㈱(東京都江東区)は、佐倉工場で生産するパーティクルボードについてSuMPO EPDの第三者検証を実施し、2024年12月27日付でEPDを取得したと、1月21日に公表した。SuMPO EPDの取得は木質ボードで初となる。
(一社)サステナブル経営推進機構(SuMPO)が運営している製品環境情報開示システムであるSuMPO EPDは、生産時の過程(原料調達から輸送および生産)で生じる環境への影響を、第三者機関によって検証した上で定量的に評価できる。これにより、建主や工務店が環境に配慮した製品を自ら選んで買うことができるようになる。
同社は2004年に新木場工場、2022年に佐倉工場のパーティクルボードにおいてEPD Internationalが運営するEPDプログラムに合格している。新たにSuMPO EPDを取得した理由としては検証のための算出作業を実施する際に参照するデータベースの違いが挙げられる。
EPD取得のための第三者検証を実施するにあたっては製品の生産過程でどれだけの温室効果ガスが排出されるか、あるいはオゾン層の破壊など環境に影響を及ぼす各項目の排出量がどれだけかを算出する。パーティクルボードの生産時における温室効果ガス排出量を算定する場合は、採用する接着剤によって使う係数が変わる。この係数はデータベースを参照する。
その際、EPD Internationalが運営するEPDプログラムではヨーロッパのデータベースを参照し、SuMPO EPDが運営するEPDプログラムでは日本のデータベースを参照する。
東京ボード工業が佐倉工場で使っている接着剤は日本国内で生産されたジフェニルメタンジイソシアネートだが、この接着剤の係数について同社井上弘之社長は「ヨーロッパのデータベースに登録されている係数は日本のデータベースよりも約2・4倍高くなっている」という。また、「EPD Internationalの第三者検証ではSuMPO EPD用のデータベースを用いることは現在できない。当社が使用している接着剤は国産であるためSuMPO EPD用のデータベースが当社の現状により近い」とも話し、SuMPO EPDを取得した理由について語った。
同社は今後SuMPO EPDで実施する第三者検証において検証対象となる算定の対象範囲を拡げていく構えだ。現状はチップや接着剤の調達から生産までを対象としているが、井上社長は「廃棄物処理やリサイクル工程も含めてできるだけ早いうちに取り組んでいく」と展望を語った。
リサイクルの環境負荷軽減は
LCAで検証するのが重要
脱炭素化社会の実現が急務とされる今、生産活動が地球環境に与える影響が注目されている。その方法としては原料調達から廃棄、リサイクルまでの過程で発生する環境に影響を与える項目などを算出するライフサイクルアセスメント(LCA)という考え方がある。特に環境負荷の軽減を付加価値とする製品ではLCAの考え方が重要で、EPD認証もこのLCAの結果を透明性高く公表する仕組みだ。
東京ボード工業のパーティクルボードは本来燃やされてしまうはずの廃木材を回収し、破砕してチップに加工、接着剤で固めて製品へとリサイクルする。廃木材を焼却処分すればCO2が大気に放出されるが、パーティクルボードに加工することで再びCO2を固定化したまま数十年間住宅の建材として利用できる。
また、廃木材を回収するための物流網も独自に構築しているのが特長だ。LCAの観点から考えればパーティクルボードを生産することによる炭素固定量と同様に、廃木材を回収しに行く際にトラックから排出されるCO2も考慮にいれる必要があるためだ。
井上社長は「生産時にかかる炭素固定量より少ないCO2放出量でリサイクルできなければならない」と話し、その理由について「放出されるCO2の方が多い場合、資源の有効利用にはなるものの、環境負荷の低減にはなってないためだ」と指摘する。さらに「環境負荷を軽減するためのリサイクルに取り組んでも、その製品生産にかかる環境負荷の方が上回るようであれば本末転倒だ」と断言した。
【日本住宅新聞2025年2月15日号より一部抜粋】