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50周年記念特集号(第二弾) 後世に断罪される新聞でありたい 住宅業界の現在を発信する代弁者としての役割堅持

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 自社の話題で恐縮だが、弊社は昭和49年9月にスタートした今年で節目の50周年を迎える新聞社だ。6月15日号では記念号第一弾として業界の過去について取り上げたが、今号では第二弾として、「住宅業界の今」に焦点を当てていく。
 さて、新聞に求められる役割としてはどのようなものがあるだろうか。少し考えてみると、現在起きている事象に関する最新の知識と情報の提供、監視と情報のチェック、コミュニケーションの促進、文化とエンターテインメントの紹介などが挙げられる。そして、もう一つ忘れてはならないのが、現代の記録を後世に残すことだ。
 過去から見て未来を生きている我々は、歴史上の出来事が引き起こした結末を知っている。だが当時を生きた人たちは何を感じ、何故そのような決断に至り、行動したのかということまでは、深くその時代の社会的背景や思想に精通しておかなければ、本質を理解することは難しい。
 翻って近年、住宅業界では、昨年10月から始まった有資格者による解体・改修工事おけるアスベストの事前調査の義務化や来年4月から始まる省エネ基準適合義務化など、大きな転換点となりそうな政策が矢継ぎ早に打ち出されてきた。また、職人不足や流通の働き方改革など、構造的側面からくる問題の他、為替や金利の引き上げ、資材価格高騰など、工務店の努力だけではいかんともしがたい不可抗力も存在する。
 さらに太陽光発電の推進にともなう住宅の設備機器の進歩も大きなテーマだ。こうした上記の事項以外の要素も含め、時代の要請が住宅業界や工務店経営に何かしらの影響を与えることは間違いない。これらの取り組みの中のいくつかは、我が国の住宅史を年表で振り返った場合でも、記録として掲載される出来事になるだろう。
 だが、例えば太陽光発電のパネルのリサイクルは現在においても完全に確立していない。仮にそうしたシステムが今後確立できなければ、現代の年表を見た後世の人たちは、何故これを推進するような動きをしたのか不思議に感じてしまうおそれがある。
 我々が現在、正当性があると考えていることでも、将来からみれば、何かしらの大きな過ちを犯しつつある可能性は常に否定できない。だからこそ、何故現在を生きる我々がこの取り組みについて合理的だと判断し、進める決断に至ったのか――。その時代の空気感やプロセスに至るまでの道のりを記録に残すことは重要だ。これによってどの時点でどのような行動をしたことが間違いだったのか、はじめて後世による検証を受けることが可能となる。
 弊紙は工務店の経営者を主な読者ターゲットとする業界紙。住宅業界、さらには建設業界全般の発展を願い、その動きやPRなどを伝えることを主な職掌としている。改めて現在を生きる我々がベストだと判断したことが、後世から見たら大きな過ちと捉えられることもあるだろう。時には弊紙が伝えた内容がネガティブな側面での記録として残ってしまう恐れもある。
 しかし、冒頭にも触れたように、新聞の役割の一つは現代の記録を残すこと。仮に後世の人が住宅史を振り返った際、より多角的な面から検証するための資料として弊紙を参考にして頂ければ幸いだ。その上で、一記者としての願望を述べるなら、願わくは、後世から我々の記事自体も検証を受け、「なぜ今犯しつつある誤りに気が付けなかったのか」と断罪してもらえるメディアであってほしいと思う。 
 日々、日本の住宅業界の発展に向けた皆さんの活躍をお伝えするには少々心もとなく思われる部分もあるかもしれない。だが、微力なりとも弊紙は今後も工務店に寄り添った専門紙として現状を発信し、皆様と後世にお伝えしていければと願っている。こうした中、今号では現在の住宅業界を語る上で欠かせない5名の方にインタビューを行った。それぞれのお立場から有意義なご知見をいただいたので、ぜひ一読し、自身の仕事につながるヒントを得てほしい。
 最後に工務店経営者の皆様、50周年を迎えるにあたり、これまでのご支援に心より感謝申し上げます。繰り返しになりますが、これからも皆様と共に、住宅業界の未来を築いていくことを楽しみにしておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


【日本住宅新聞9月15日号より一部抜粋】

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