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ロス紙活用した装飾用壁材 大賞・社員賞ダブル受賞

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 ㈱サンゲツ(名古屋市)は3月6日、壁紙デザインだけに留まらない新たな壁のあり方を募集する「サンゲツデザインアワード2024」の表彰式を東京都内で開催した。2024年のテーマは「Joy of Design」。壁紙の枠を超えて、壁面のデザインを募集したところ、エントリーは528点と過去最高を記録した。
 冒頭、同社スペースプランニング部門ゼネラルマネージャーの髙木史緒執行役員が挨拶。応募作品について「壁から考えられる新たな役割について非常に可能性を感じることができた」としたうえで「今後それを我々の仕事や社会価値の提供といったサービスにつなげていきたいと思っている」と話した。
 今回大賞を受賞したのは㈱坂井印刷所の室内装飾用壁材「PACROUGH block」、同作品はサンゲツの500名を超える社員による投票で決める「サンゲツ社員賞」とのダブル受賞となった。当日は構想を担当した金丸萌さんと、製作を担当した吉田大貴さんが登壇した。
 同作品は廃棄される紙を原料としている。坂井印刷所が高品質な印刷物を提供する過程では品質基準に満たなかった印刷物の「ロス紙」が発生する。また、パッケージなどのサンプルを作成する際にもより良いモノ作りのために多くの廃棄サンプルが生じる。
 廃棄されてしまう紙を企業努力によって「最小限にはできてもゼロにはできない」と金丸萌さんは話し、廃棄される紙を原料とした壁材「PACROUGH block」の提案に至った背景について話す。
 製造フローは回収、粉砕、成形の三段階に分けられる。パッケージの厚紙を粉砕して、チップ状に加工。壁材に成形する際には環境に配慮して、でんぷん糊を採用する想定だ。印刷された紙を粉砕して原料としているため、壁材それぞれに表情があり、ひとつとして同じものがない「一期一会感」も特長だ。
 審査員からは「誰かが誰かのために作った印刷物が、新たに第三者のために生まれ変わるというストーリーが良い」、「印刷会社に務める2人が課題意識を持って取り組んだ当事者意識のあるデザインだ」、「紙のパッケージは使い捨てというイメージがあるが、これをベースとして長期間使い続ける壁を作ったという発想が良い」など好評な意見が挙がった。
 サンゲツの近藤康正代表取締役社長執行役員は「(2人の)上司や会社の理解を得て、ぜひ量産につなげてもらいたい」と話した。これについて製作を担当した吉田大貴さんは「(量産化を)新しい業務にしていきたい」と話した。
 最後に金丸萌さんは「これからも自分が向き合っている素材や、(印刷物の)制作環境、業界のことについて考えながら、モノづくりを続けていきたい」と今後の展望について語った。

【日本住宅新聞2025年3月15日号より一部抜粋】
画像:㈱坂井印刷所の金丸萌さんと吉田大貴さんが提案した「PACROUGH block」は大賞と社員賞を受賞。廃棄される紙を原料として装飾用壁材に蘇らせた

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