手動制御より自動制御に 消費者便益あり

近年、再エネの導入拡大により出力制御エリアは全国に拡大し、電力需要の減少等の影響により、足元の出力制御量は増加傾向にある。この状況を改善する方策の一つとしては、昼間の電力需要を創出することが効果的だ。
こうした中、環境省は今年度、「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)の一環として、再生可能エネルギー導入の拡大により生じる昼の余剰電力を有効活用し、脱炭素につながるライフスタイル転換を促進するための実証事業を、①関西電力㈱・Nature㈱、②㈱Looopと共に実施した。同実証事業は、IoT機器や市場連動型電気料金プランを活用し、消費者の行動変容や機器制御を行うことで昼間の電力需要を創出することを目的としたもの。
なお、「デコ活」とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称で、二酸化炭素 (CO2)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む『デコ』と活動・生活を組み合わせた新しい言葉となっている。
上げDRとは
同実証事業においては、昼間の電力需要の創出に向け、ディマンド・リスポンス(DemandResponse:DR)(消費者が賢く電力使用量を制御することで電力需要パターンを変化させること)のうち、「上げDR」を促す取り組みとして、「機器制御型DR(IoT機器を活用した自動制御)」と「行動変容型DR(消費者が自ら制御)」の2つの手法を組み合わせ、昼間の電力利用のシフトに関する効果を検証した。「上げDR」とは、DR発動により電気の需用量を増やすこと。例えば、再エネの過剰出力分を、需要機器を稼働して消費したり、蓄電池やEVへ充電することにより吸収したりすることを指す。
実証結果は
具体的に①の実証事業では、実施グループを機器制御グループと行動変容グループに区分し、いずれも再エネ出力制御が発生する可能性が高い、ないしは電力市場での電力量価格がほか時間帯と比べて低い時間帯において、上げDR実施指令を行った。サンプル数は蓄電池・エコキュート・EVなどを所有する家庭を対象に、機器制御グループ88件、行動変容グループ356件、実証期間が2024年10月21日~11月30日となっている。
この実証事業の結果では、HEMSを活用した住宅用エネルギー機器(蓄電池・エコキュート・EV)の「自動制御」が「手動制御」と比較して、高い上げDRの効果を持つことが確認された。また、「自動制御」による経済便益が最も大きくなる場合において、実証期間中に世帯あたり最大約2400円程度の消費者便益を得られる可能性があることが確認された。
一方、機器登録設定の煩雑さや、電力会社提供の報酬とユーザーの期待値の乖離など、社会実装に向けた課題も明らかになった。環境省では、同実証事業の結果を踏まえ、今後のディマンド・リスポンス(DR)の社会実装に向けた更なる検討を進めていくとしている。
【日本住宅新聞2025年4月15日号より一部抜粋】