新築と既存は「ひび割れ」、リフォームは「はがれ」 「住宅相談統計年報2024」電話相談による不具合事象と主な不具合部位

(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターはこのほど、「住宅相談統計年報2024」を公表。戸建住宅の不具合事象は、新築では「ひび割れ」が最も多く、次いで「性能不足」、「雨漏り」が多かった。また、既存住宅では「雨漏り」が最も多く、次いで「ひび割れ」、「はがれ」が多くなっている。また、「リフォームでは「はがれ」が最も多く、次いで「性能不足」、「雨漏り」が多かった。
同財団は「住宅品質確保法」「住宅瑕疵担保履行法」に基づき、住宅の取得やリフォームに関してトラブルや不安を抱える消費者等に対し、技術的な問題から法律的な問題まで幅広く電話相談を行っている組織。この年報は、同財団が国土交通大臣の指定を受けて行っている業務の一環として作成されたもので、2023年度の「電話相談」、「専門家相談」、「住宅紛争処理」について、相談内容等を統計的に集計・分析したもの。
このうち、電話相談は[新築相談]、[既存相談]、[リフォーム相談]、[その他相談](賃貸やマンション建替え等他の3区分に該当しない相談)の4区分で集計している。今回の年報では、「新規相談件数」は3万2569件となり、前年度の3万5772件と比較して9・0%減少した。相談区分別にみると、[新築相談]は1万2884件、[既存相談]は1625件、[リフォーム相談]は1万2011件、[その他相談]が6049件でいずれも件数は前年比で減少している。
相談の90・5%は「消費者」からの相談だ。住宅のトラブルに関する相談における主な苦情の相手方は、[新築相談]が「新築時の施工業者」、[既存相談]が「不動産業者(宅建事業者・仲介事業者)」、[リフォーム相談]では「リフォーム業者」が最も多い。
住宅の利用関係は、「持ち家」が[新築相談]で98・5%、[リフォーム相談]では96・1%と高い割合を示している。なお[既存相談]については、「賃貸住宅以外のもの」を集計しているため、全てが「持ち家」という扱いだ。 住宅の形式は、「戸建住宅」が全体の75・8%を占め、区分別にみると、[新築相談]が87・9%、[既存相談]が56・9%、[リフォーム相談]が77・2%となっている。住宅の形式別にみると、「木造」が[電話相談全体]の71・8%を占めた。特に「戸建住宅」で見た場合、木造の占める割合が全ての区分で8割以上を占めている。
電話相談全体のうち「トラブルに関する相談」件数は2万3408件(71・9%)。このうち、賃貸借契約や相隣関係などのトラブルを除いた「住宅のトラブルに関する相談」は、[新築相談]で98・0%、[既存相談]で83・5%、[リフォーム相談]で97・8%と高い。
住宅のトラブルに関する相談における相談者の解決希望内容は、[新築相談]と[既存相談]では、「修補」の割合が最も多く、「修補と損害賠償」を加えたものの合計はともに6割以上を占める。一方、[リフォーム相談]では「修補」、「修補と損害賠償」の計は50・0%と若干低めになった。
住宅のトラブルに関する相談のうち、雨漏りやひび割れなどの不具合が生じている相談は、[新築相談]で78・0%、[既存相談]で83・9%、[リフォーム相談]で64・9%。「戸建住宅」における各区分の不具合事象を細かく見ていくと、[新築相談](複数カウントn=6853)は、「ひび割れ」が最も多く21・2%。次いで「性能不足」(14・4%)、「雨漏り」(13・5%)が多かった。
同じく[既存相談]における不具合事象(複数カウントn=460)は「雨漏り」が最も多く28・5%。次いで「ひび割れ」(12・4%)、「はがれ」(9・8%)と続く。
[リフォーム相談]における不具合事象(複数カウントn=3730)は、「はがれ」が最も多く17・6%。次いで「性能不足」(13・6%)、「雨漏り」(13・1%)の順となっている。
契約後の相談が大多数
[リフォーム相談]のトラブルに関する相談7914件のうち、訪問販売に関する相談による件数は878件で11・1%を占めた。相談の時期は、契約時期が判明している訪問販売相談の98・1%が「契約後の相談」となっている。
相談内容をみると、「契約に関するトラブル」が最も多く71・9%。それに「不具合および契約に関するトラブル」
11・6%)を加えた、契約に関するトラブルを含む相談の割合は83・5%を占めた。訪問販売相談における解決希望内容をみると、46・9%が契約解消を希望している。
新築やリフォームに関するよくあるトラブルを把握することで、事前に対策を講じることができることから、工務店経営者が同年報を読むことで得られるメリットは多岐にわたるといえるだろう。契約トラブルの事例を参考にすることで、契約内容の明確化や管理体制の強化を図る観点から、また相談内容やトラブルの傾向から、顧客が求めるサービスや品質のニーズを把握することができ、これにより、競争力のあるサービス提供につなげることが望まれる。
【日本住宅新聞10月5日号より一部抜粋】