1. TOP
  2. 企業・団体
  3. 今年度住宅着工戸数、79.0万戸と予測 今年度の見通しは?

今年度住宅着工戸数、79.0万戸と予測 今年度の見通しは?

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 (一財)建設経済研究所と(一財)経済調査会経済調査研究所は11日、「建設経済モデルによる建設投資の見通し」を発表。2024年度の住宅着工戸数は、前年度比0・5%減の79・7万戸と予測したほか、2025 年度の住宅着工戸数は、前年度比0・9%減の79・0万戸との見通しを示した。
 これは「建設経済モデル」を用い、四半期別国民所得統計速報を踏まえた年度別・四半期別の建設経済の予測結果だ。2024年度と2025年度の住宅および建築補修(改装・改修)投資の動向を調査している。工務店経営者にとって市場の先行きを見極め、事業戦略を立てる上で参考となるものといえるだろう。
 同予測では2024年度の住宅着工戸数について、前年度比0・5%減の79・7万戸になると記載。持家・分譲戸建の減少基調に対し、貸家・分譲マンションは微増し、前年度と同水準となる見通しを示した。
 このうち持家は、用地価格とともに建築価格が上昇傾向のため一次取得者の動きが慎重であると指摘。一方、富裕層向けの高付加価値商品の販売が堅調なことから前年度と同水準になるとして同比0・5%減の21・9万戸としている。
 貸家は、同比1・9%増の34・7万戸と予測。首都圏を中心とした賃貸需要の高まりを背景に物件の大型化・高付加価値化が進むなど、市場は概ね堅調であり、前年度比で微増となるとした。
 分譲住宅は同比4・6%減の22・4万戸とする。このうち、分譲マンションについては昨年4月~本年1月の着工戸数の実績が昨年度を上回っていることから、同比で増加と見込む。一方で本年1月までの分譲戸建は過去12年間の最低値を記録、前年度比で減少するとした。

今年度の見通しは?

 今回、2025年度の住宅着工戸数について、同比0・9%減の79・0万戸とする。持家・分譲戸建の減少傾向は続くが、分譲マンションは増加し、前年度と同水準となる見通しとした。同年度の民間住宅投資額は、同比2・7%増の17兆4200億円と予想。建設コスト上昇の影響により実際に取引されている価格に基づく名目値ベースでは前年度比で微増、物価変動の影響を取り除いた実質値ベースでは前年度と同水準になるとした。
 その上で持家着工戸数は、同比1・8%減の21・5万戸とする。その根拠として、「子育てグリーン支援事業」による補助金等の支援策が追い風となることに言及。一方、住宅価格の高騰、実質賃金低下、展示場への来場者数の伸び悩みなど懸念材料は多くあり、前年度比で微減とした。
 貸家着工戸数は、同比1・2%減の34・3万戸と見込む。持家需要の低下に変化はなく、賃貸住宅への需要は当面の間維持されると考えられるが、金利上昇次第などで投資家のマインドが冷え、需要が低下するなどの懸念材料も存在する。そのため、前年度比で微減になるとした。
 分譲住宅着工戸数は、同比0・7%増の22・6万戸とした。分譲マンションは都心や湾岸エリアでは高値でも根強い需要があり、前年度比で増加と予測。分譲戸建は土地の新規購入を控える動きもあり、前年度比で減少するとした。

住宅のフォーム需要は堅調

 同予測では民間建築補修(改装・改修)についても触れている。この中で住宅分野については、「政府の住宅省エネキャンペーンによる効果や建替計画から大型リフォームやリノベーション計画へのシフトにより、今後も堅調な投資が期待される」とした。
 建築補修の非住宅分野では、インバウンド需要に対応したホテル改修工事や、オフィス・生産施設における省エネ対策や高付加価値化のニーズにより、引き続き堅調な投資が見込まれるとする。これを受け、2024年度は同比で増加、2025年度は2023年度からの大幅な上昇の反動を受け同比で減少するが、引き続き高水準の投資が続くとまとめた。
 なお、今回の予測では4月から施行された省エネ基準の義務化の影響は織り込んでいない。このため、持家や分譲戸建で着工戸数が下振れする可能性もあるので注意が必要だ。この他、近年の住宅価格や金利上昇に対する懸念などから様子見している取得希望者層も存在すると思われる。加えて為替や実質賃金の低下が危惧されるなど、波乱要因が多数存在しているのが現実だ。
 こうした中、工務店にとってターゲット市場の選定が重要となってくる。同予測を踏まえると、堅調な富裕層向けの高付加価値商品の取扱いや子育てグリーン支援事業などの補助金を追い風とする提案を活用した営業戦略が有効となりそうだ。また、分譲住宅ではマンションと戸建の明暗が分かれる結果に。分譲戸建てを扱ってきた工務店はリスク分散の一環として、堅調な投資が見込まれる建築補修の非住宅分野などへの取り組みも検討するのも一つの手と言えるだろう。
 工務店は同予測などを踏まえ市場トレンドを把握し、持続可能な企業経営に務めてほしい。

【日本住宅新聞20254月15日号より一部抜粋】
画像:住宅着工戸数の推移

関連キーワード