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50周年記念特集号(第三弾) 未来も家守りの役割は不変 住まいもCO2削減に能動的に貢献する時代へ

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 弊社50周年を記念し、これまで弊紙上で2回にわたって「過去編」、「現在編と」住宅業界の歴史と立ち位置を見つめる記事を掲載してきた。最後の3回目となる今回は「未来編」だ。
 我が国の住宅や業界の在り方は50年前と比べ大きく変わっているが、では50年後の2074年はどのように変化すると考えられるだろうか。あくまで想像の上に成り立つSF的要素があることは承知の上で、読者の皆様にも少しお付き合い頂きたい。
 未来を語る上で念頭に入れておかなければならないことが、「社会や環境の変化」。近未来的に我が国は地球温暖化や少子高齢化、社会インフラの老朽化等が進行すると見込まれており、これらの課題に対抗する手段が求められている。
 このような方向性の先にある50年後の未来では、例えば住まいにおける省エネ性能や熱中症対策はより必要となっていることだろう。現在政府は「2030年までに新築住宅の平均、2050年にはストック平均でZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指す」方針だ。
 仮に2030年に住まいを建て、あえて木造の居住用建物の法定耐用年数である22年ごとに建て替えた場合、2074年は2度目の住まいの寿命を迎えるタイミングに重なる。住まいとして2世代経た計算となるが、その頃にはストックを含め、住宅性能表示制度における等級6、7が当たり前となっているのではないか。
 求められる住宅の性能向上は断熱分野だけに限らない。近年、大雨などの災害が激甚化しており、「観測史上初めて」という言葉も頻繁に耳にするようになった。従来の規模の災害なら十分に対応可能だった住まい作りであっても、未来永劫想定の範囲内で災害が収まる保証はない。仮に現在は「観測史上初」の災害であっても、今後それが一般的となるような時代に突入していけば、住まいに必要とされる防災能力の基準もさらに高めなければならなくなるのだ。

新たな価値観とのすり合わせは重要

 この他、高齢者の割合がさらに増え、若者世帯の減少が進むことからは逃れられそうにない。そうなれば当然、社会構造も大きく変わってくる。企業によってはリフォームやリノベーション、中大規模など、新築以外にも新たな業務の拡大を検討する必要が出てくるかもしれない。
 さらに住宅取得層はやがてZ世代よりその先の若い世代となる。こうした新たな世代との価値観のすり合わせも重要な課題だ。
 現在、若い世代はカーシェアやレンタル・サブスクの利用意向が高い他、環境意識が高く、持続可能な社会を強く求める傾向があるという。50年後の住宅取得世代が「物の所有に否定的な考えを持つ人々」なのかどうかや住宅営業において対面式が主流であり続けるかどうかは不明だ。それでも自社での住まい新築を訴えるため、各世代の価値観を理解し、共感を得ることが求められる点については変わらないと思われる。
 また、労働人口減少により、現在すでに問題となっている職人不足がさらに進めば、将来的には住宅業界においてもAIやロボット技術が中心的な役割を果たす時代がやってくる可能性がある点を指摘しておきたい。その際、オートメーションと相性の良い3Dプリンターの発展版といった、未来のデジタル技術を使った住まいづくりが今より汎用化していることは十分ありうる話だ。
 逆に考えれば、現在のように職人の力で住まいづくりをすることは、特別なこととして、より高く評価されるのではないか。このような時代では、住まいづくりの原点に立ち返った「本物志向」が強まると考えられる。
 この他、住まい方も変わることは間違いない。一例として、住まいでの暮らし方においては様々な端末がネットワークに接続され、人々の健康管理や生活の質を向上させることが可能になると思われる。室内の空気質を自動で調整して健康的な室内環境を維持することや、住まい手の体調や精神状態を把握し、リラックスさせるためのアプローチも期待できるかもしれない。
 いずれにせよ、未来においても衣食住は重要な生活の要素であることには変わりないはずだ。お施主様の幸福を担保するためにも、現在の工務店は今後数十年にわたって大きな気候変動などが起きることを見据えた住まいづくりを行ってほしい。そして、50年後の工務店も地域の家守りとして相変わらず信頼され続ける企業であることを願っている。
 弊社も微力ながらこうしたお手伝いができれば幸甚だ。どうぞ、今後とも末永く宜しくお願い致します。


【日本住宅新聞11月5日号より一部抜粋】

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